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パエリアにガスパッチョ、生ハム、コシード、子豚の丸焼き・・・。
気取らない普段着のスペインから、ちょっとおしゃれなスペインまで。
マドリッド在住二人の日本人女性が贈る、スペイン 食の魅力。
   
 
 
   
 

長くて暑〜いマドリッドの夏が終わりました。今日の気温は14度。何気に寒がりなスペイン人は既にセーター、ジャケット着用です。観光大国スペインで季節の変わり目に目立つのがスウェーデン等の北の方のヨーロッパからやって来た人達。スペイン人と比べて背が高く、髪の毛の色も金髪に近く、ミルクのような白い肌を持った彼等は太陽がある限り素足にサンダル、ノースリーブ。寒さの厳しい国からやって来た彼らの夏はまだまだ終わらない、と言うか終わらせたくないみたい。だからこの時期のマドリッド、道行く人々の服装に全く季節の統一感が見られません。

スペイン人に負けず劣らず寒がりな私もすっかり冬モード。日に日に冷え込みが厳しくなる夜は何か暖かいものをフーフーして食べたくなります。こんな日はコトコトじっくり煮込んだ熱々の煮豆料理が一番。
煮豆料理はスペインのお袋の味を代表する冬の定番料理です。レンズ豆、ひよこ豆、白インゲン豆、赤インゲン豆、使う豆の種類は変わっても基本の作り方は殆ど同じ。

   
 
※色々な種類の豆

オリーブオイルで玉ねぎ、ニンニク、トマト、ピーマンをしんなりするまで炒めます。後は1晩水に漬けた豆、お好みの肉と野菜、月桂樹の葉、そして全てが浸るくらいの水を加え弱火でゆっくり煮込むだけ。
基本は同じ、でも各家庭でオリジナルのスパイスや素材を使ってお袋の味スペシャルが完成です。本当に誰もが「うちのママの煮豆料理が世界一」と譲りません。
煮豆料理の作り方は簡単なのですが、とにかく時間がかかります。時間をかけてゆっくり煮れば煮る程美味しくなる料理、でも豆が煮崩れしてしまったらアウト。素焼きの土鍋で、あまりかき回さず、5〜8時間かけて煮込むのがベストだそうです。とは言うものの最近のお母さんは余り時間が無いので、圧力鍋を使ってアッと言う間に作っちゃうのが今の主流だとか。でも昔ながらの作り方で作る煮豆料理の味には断然かなわないようです。

圧力鍋も忍耐力も無い若者はスーパーで売っている煮豆料理の缶詰で満足しているようです。色々な種類の煮豆料理が揃っていて、一缶2ユーロ前後。若干チープな味ですが決して悪くはない味。会社に缶ごと持って来てレンジでチンして食べている人も多く見かけます。私は帰国の度にお土産として買って帰ります。

   
 
※キャットフードのようですが全て煮豆料理
※ファバーダと呼ばれる白インゲン豆料理

どの豆を使った煮豆料理も、素朴で優しい味がして大好きです。でも私の一番のお気に入りは白インゲン豆を使ったファバーダと呼ばれる煮豆料理。白インゲン豆をベースに基本は豚のラード、ソーセージ、角切りにした牛肉、豚の血で作ったソーセージ、豚の骨が入ります。ちなみに煮豆料理にはスモークされたソーセージを使うのが一番だとか。家庭によっては豚の耳や尻尾まで入ります。

   
 
※アストゥリアス産の白インゲン豆

ファバーダはスペイン全土で食べられている冬の定番料理。でもスペイン北西部に位置するアストゥリアス地方のファバーダが一番有名。この土地が白インゲン豆の産地でもあるからです。
そしてちょっと家庭では味わえない、変り種ファバーダが貝入りファバーダ。この地方特産の新鮮な貝をたっぷり使ったファバーダです。肉を使ったファバーダよりも軽い仕上がりで、日本人の口にも良く合います。貝入りファバーダを食べるにはアストゥリアス料理専門のレストランに足を運ぶ必要があります。でも心配は無用、マドリッドには沢山のアストゥリアス料理専門のレストランがあります。

   
 
※貝入りファバーダ

アストゥリアス地方はスペインの北西部にある、切り立った断崖の連なる海岸部と“ヨーロッパの峰々”と呼ばれる、高いところでは標高2、648mに達する山岳地帯に挟まれた地域です。降水量が多く、雪解け水も豊富な為、緑のスペインとも呼ばれるとても美しい地方です。険しい地形の為に古くから何処の支配からも逃れ、8世紀の初頭にイスラム勢力がイベリア半島を征服した時もこの土地だけが征服されず、キリスト教最後の牙城となりました。この地方が後のレオン王国となり、カスティージャ王国、そしてスペイン王国へと成長していったのです。だから今でもスペインの王位継承者の称号にはこの土地の名前が使われます。

小さな、でも生粋のスペインを感じさせる土地、アストゥリアス地方。ファバーダと並んで有名なのがカブラレスと呼ばれるチーズです。この地方には100種類位のチーズがあるそうですが、アストゥリアスと言えばカブラレスチーズ、スペインで一番有名なチーズではないでしょうか。
カブラレスチーズはブルーチーズの仲間。世界三大ブルーチーズと呼ばれるのがフランス産のロックフォール、イタリアのゴルゴンゾーラそしてイギリスのスティルトン。どれも美味しいブルーチーズですが我らがカブラレスも負けず劣らず素晴らしい味です。ロックフォールは羊の乳、ゴルゴンゾーラとスティルトンは牛の乳を使いますが、カブラレスは牛と羊とヤギ、三種類の乳をミックスさせて作ります。ヤギの乳が入っているせいか他のチーズと比べて独特の臭みがあり、酸味もきつく、どのチーズよりも辛口です。
アストゥリアス地方は山の多い土地柄、自然に出来た洞窟が沢山あります。この自然の洞窟でカブラレスチーズは2ヶ月から4ヶ月間過ごします。洞窟は室温が8度から12度、そして90%の湿度がなくてはいけません。この条件でしかカブラレスチーズ独特の青カビが発生しないからです。昔は湿らせたカエデの葉っぱでチーズをつつんで発酵させ、それがカブラレスチーズのシンボルとなっていたのですが現在は衛生上禁止されているそうです。

   
 
※カブラレスチーズ

臭ければ臭い程美味しいチーズなのだとスペイン人は力説しますが、カブラレすチーズは本当にもの凄く臭いです。そしてこのチーズ、本当に色々な食べ方があります。普通にそのまま食べるなら、生ハムと同じで冷蔵庫から出した後すぐに食べてはいけません。常温で10分程置いてから食べます。脂肪分がとても多いチーズなので、常温で脂肪分をまろやかにさせてから食べるのがコツ。

   
 
※カブラレスチーズ入りコロッケ

そのまま食べても勿論美味しいのですが、マスカットと一緒に食べる、サラダやコロッケに入れる、熱々のお肉の上にのせて少し溶かしてから食べる、本当に色々な食べ方があります。中でもスペイン人が一番好きな食べ方はカブラレスチーズをリンゴの発泡酒、シードラと混ぜて練り、柔らかいソース状にしてジャガイモやナスのフライにかけて食べる方法。癖になる程美味しくて、お値段もお手頃なのでアストゥリアス料理のレストランに行くと必ずオーダーしてしまう一品です。

   
 
※揚げナスのカブラレスチーズがけ

アストゥリアス料理は気取りの無いレストランが多いです。ワイワイガヤガヤ大皿料理を分け合って食べているスペイン人達で溢れているレストランを見つけたら要チェック。アストゥリアス料理専門のレストランである事が多いです。あんまりにも周りのスペイン人達がうるさいので、声を張り上げながら喋っていると喉が渇きます。そんな時はアストゥリアス地方特産のリンゴの発泡酒、シードラを。甘く口当たりの良いお酒なのでクイクイ飲んでしまいます。後悔しないよう飲み過ぎには注意しましょう。

   
 
※リンゴの発泡酒、シードラ
 
 

取材:市川由実

   
   
 
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