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パエリアにガスパッチョ、生ハム、コシード、子豚の丸焼き・・・。
気取らない普段着のスペインから、ちょっとおしゃれなスペインまで。
マドリッド在住二人の日本人女性が贈る、スペイン 食の魅力。
   
 
 
   
 

マドリッドにスペイン最古のレストランがあります。旧市街の中心、マヨール広場に隣接したレストラン「ボティン」の創業は1725年。スペインのみならず、世界で一番古いレストランとしてギネスブックに登録されています。
このレストラン、ただ古いだけではありません。多くの人々から愛され、世界中の政治家や著名人が訪れるだけでなく、色々な小説の舞台となりました。例えば「第三の男」を書いたイギリス人作家グレアム・グリーン、「ジャッカルの日」のフレデリック・フォーサイス、ピューリッツアー賞を受賞したジェイムズ・A・ミッチェナー。国内ではドンキホーテの作者セルバンテス以来最も優れたスペイン人作家と称されるベニート・ペレス・ガルドス(1920年没)もこのレストランのファンでした。彼の代表作「フォルトゥナタとハシンタ」にも「ボティン」の実名でこのレストランが登場します。

   
 
※レストランの看板の下にはガルドスを敬したプラカード
レストランの長い長い歴史を感じさせるエピソードとして面白いのは、スペインを代表する天才画家ゴヤが1765年頃このレストランで皿洗いとして働いていた事でしょうか。しかし彼がこのレストランを愛していたかどうかは不明です。
   
 

どのガイドブックにも必ず載っている有名店なので、何時でも多くの観光客で賑わっています。特にアメリカ人観光客が多いのはアメリカの偉大な作家、ヘミングウェイもこのレストランを愛し、彼の小説に「ボティン」の名が度々登場するからでしょうか。世界的なベストセラーとなった「日はまた昇る」では、主人公に「ボティン」は世界一のレストラン、とまで言わせちゃってます。

ヘミングウェイとスペインの繋がりはとても深く、フランスに滞在していた7年の間にスペインを何度も訪れ、スペインを舞台にした幾つかの小説を書きました。アメリカに帰国後も1936年にスペイン内戦が起こると、いてもたってもいられなくなった彼は新聞社の特派員としてスペインに駆け付けています。内戦下のスペインに8ヶ月程滞在し、その経験を元に映画にもなった「誰が為に鐘は鳴る」を執筆した事は有名ですね。そんなヘミングウェイが美味しいワインと料理を堪能し、原稿まで書いちゃってた場所がこのレストラン「ボティン」なのです。
※レトロな雰囲気のバーカウンター

マドリッドで最も歴史を感じさせるクチジェロス通りに面しているレストラン「ボティン」。外見は至って普通のレストランなのですが、中に一歩足を踏み入れるとタイムトリップが始まります。

まずは外見からは予想がつかないレストランの大きさに驚くことでしょう。地下室を含め4階建てのレストランとは。以前はレストランとしての営業は一階部分のみで、地下室はワインを保存する貯蔵庫兼物置きとして、2階と3階部分は住居として使用していたそうです。長い歴史の重み、雰囲気を壊す事無く少しずつ改良し現在の形となりました。
   
 
※マヨール広場から眺めるクチジェロス通り

このレストランの常連客だったヘミングウェイが愛したのは2階の奥の席。まるで誰かの家に招待されたかのようなアットホームな雰囲気です。

   
 
※2階のヘミングウェイ特等席

どの階も素敵なのですが、一番独特なのは地下の階ではないでしょうか。秘密の抜け穴のような暗くて狭い階段を降りると、穴倉風の天井のアーチが美しい地下食堂へ。ワイン貯蔵庫の一部も昔のままに残してあるので見学する事が出来ます。

   
 
※古い歴史を感じさせる1階席
   
 
※柔らかい日差しで溢れた3階席
   
 
※ワイン貯蔵庫を改良した地下の食堂
   
 
※地下の階へ通じる階段
   
 
※ワイン貯蔵庫へ続く階段
   
 
※ワイン貯蔵庫

レストラン「ボティン」を代表する料理は子豚の丸焼きですが、魚料理や子羊のオーブン焼きにも定評があります。とっても迷いましたが「ボティン」の名物であり、ヘミングウェイも「世界で一番美味しい料理」と絶賛する子豚の丸焼きを注文する事に。

子豚の丸焼きはとてもシンプルな料理なので、素材の良さが決め手です。「ボティン」では子豚の産地として有名な隣県のセゴビア市から週に3〜4回新鮮なお肉を仕入れています。
   
 
※厨房に並んだ調理済みの子豚達

子豚の丸焼きには生後1ヶ月半以内、3〜4キロ程度の子豚を使います。子豚と言うよりは母乳以外まだ口にしていない乳飲み子の豚。厨房には調理済みの無垢な子豚ちゃん達の無残な姿が並びます。頭から尻尾まで、本当に全てが丸焼きなので心が更に痛むのですが、柔らかい口当たりの脂肪分が口の中でとろける、とってもジューシィなお肉は本当に美味しいのです。何時も食べている豚肉とは全く別種の豚肉、違う次元の豚肉。パリッと焼かれた皮がお肉の柔らかさを更に強調します。

「ボティン」ではドングリの木を薪に石釜で子豚を焼いています。調理には火のあたりが柔らかく、保温性の高い土鍋を使うのがコツだとか。160℃程度のオーブンで2時間半かけてゆっくり焼きあげるのだそです。
   
 
※本当に丸焼きなので頭も尻尾も全部付いてます。
   
 
※ボティンの石釜

子豚の丸焼きを堪能するには、前菜とデザート、飲み物が付いた38ユーロのコースがお勧めです。とても量が多いので食が細い人なら2人で1コースでも大丈夫かも。食後感がヘビーなので食べ過ぎると後が辛いです。動けません。私達は2人で1つのコース、メインの子豚の丸焼きをシェアして、前菜と飲み物を一人分別にオーダーしました。

   
 
※一人前の量

コース料理の前菜は夏の定番ガスパッチョ。サラダのドレッシングのような酸っぱい味の冷たい野菜スープです。さっぱりしていて子豚の丸焼きとは最高の相性。

   
 
※ガスパッチョ

コースの他に前菜でナスのサムレッホソースがけを注文しました。サムレッホと呼ばれるトマトをベースにした冷たいソースはとてもさっぱりしていたのですが、ナスが揚げナスなのです。この前菜が結構なボリュームだった為、メインを食べ終える頃にはお腹がいっぱい過ぎてデザートを食べるのが辛かったです。

   
 
※ナスのサムレッホソースがけ
   
 
※デザートのアイスクリーム

レストラン「ボティン」を創設したのはフランス人シェフ、ジャン・ボティン氏。しかしボティン氏には後継者が居なかった為、彼の甥にあたるカンディド氏にレストランは受け継がれました。その日からレストランの正式な名称は「ソブリノ デ ボティン(SOBRINO DE BOTIN)ボティンの甥」。レストランの看板にも「ソブリノ デ ボティン」と一応は書かれてはいますが誰もがこのレストランを「ボティン」と呼んでいます。 

ヘミングウェイが愛した子豚の丸焼きを、300年の歴史を誇るレストランで堪能してみて下さい。「日はまた昇る」の主人公のように、子豚の丸焼きにはリオハの赤ワインを合わせるのが良いでしょう。でも飲み過ぎはいけません。小説の主人公は子豚の丸焼きを食べる間に3本のワインを空けましたが・・・。
   
 

ソブリノ デ ボティン(SOBRINO DE BOTIN)
住所:CUCHILLEROS, 17

電話番号:913664217
   
 

取材:市川由実

   
   
 
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