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パエリアにガスパッチョ、生ハム、コシード、子豚の丸焼き・・・。
気取らない普段着のスペインから、ちょっとおしゃれなスペインまで。
マドリッド在住二人の日本人女性が贈る、スペイン 食の魅力。
   
 
 
 
6月に結婚する花嫁は幸せになれる、日本でも人気のあるジューン・ブライドは古くからヨーロッパに伝わる伝承です。特にスペインでは6月になるまで雨が降ったり寒かったりで気候が安定しません。そして7月や8月となれば暑すぎで、バカンスシーズンも始まってしまうので、招待客が旅行に出かけてしまって誰も結婚式に来れない、なんて事を避ける為にも“6月の花嫁”は圧倒的な支持を得ています。
   
 

万国共通で結婚式を挙げるカップルを悩ませるのがオリジナルウエディングを実現させる為のメニューの選択です。
スペイン人は老いも若きもお肉が大好き。だからメインは肉の塊、例えば子羊の足丸ごと1本を土鍋に入れてオーブンで焼いたもの、しかも1人1本、なんてボリューム満点の料理が、伝統的に好まれています。
しかし、そんな伝統が革新派エル・ブジのシェフ、フェラン・アドリア氏の出現によって変わりつつあります。
最近はオシャレ系の創作料理で招待客をもてなす傾向が強くなっているようです。

しかし結婚式ですから、幅広い層の年代に受け入れられる料理でなくてはいけません。スペイン人、特にお年寄りは食に対し保守的な人が多いので、最近の新しい傾向に少し不満もあるようです。普段は創作料理系のレストランで楽しむ若者達の中にも、結婚式はオーソドックスな料理の方が良いとする人達が沢山います。その理由の一つがボリューム。大きなお皿の中心にこじんまりと盛られた芸術的な料理より、お皿から溢れんばかりの料理が食べたいのだそうです。特にスペインの結婚式は長丁場なので、腹が減っては戦が出来ぬ、なのかも知れません。
   
 

スペインの結婚式は始まる時間が遅いのが特徴です。スペイン人は子供もお年寄りも夜更かしが大好きで、飛ぶ鳥が焼け落ちる、なんて暑さを誇る地域もあるので、暑い時間を避けた遅めの結婚式が好まれるようです。ここマドリッドで一番人気なのは夜の9時半頃に始まるディナータイムの披露宴です。夕方の6時頃に教会で挙式、8時半頃からカクテルタイム、そして9時半頃から着席しての本格的なディナータイムとなります。ディナーが終わるとダンスタイムの始まりです。

国民の大半がカトリック教徒のスペイン、しかし敬虔なカトリック教徒は年々少なくなっています。最近では教会で結婚する事を避け、住んでる町の市役所や裁判所で結婚式を挙げるカップルが多くなりました。今後もこの傾向は更に強まり、教会離れが進むと言われています。実際形だけの挙式が出来るイミテーションの教会と披露宴会場、ダンス会場がセットになった複合型結婚式場で結婚式を挙げるカップルが増えているそうです。

   
 

今回取材したのは一番オーソドックスな教会婚のケースです。スペインでは結婚式前に花婿が花嫁のドレス姿を見る事は不運とされているので、新郎新婦は別々の場所で支度をし、花婿はドレス姿の花嫁を教会の祭壇の上で初めて見る事になります。
式が終わると招待客は教会の外へ出て新郎新婦を待ちます。結婚した2人が教会の扉を出ると同時にライスシャワーです。中にはバケツ一杯に入ったお米を花婿の頭の上に振り落とす悪友も居ます。

   
 

教会から披露宴会場へは各自で移動となります。新郎新婦はリボンやお花で飾られた借り物のベンツなんかを使って移動します。披露宴会場に着くとまずは立席でのカクテルタイムとなります。イベリコ豚の生ハム、ソーセージ、ヤギのチーズ、フォアグラ、オレンジのソースと一緒に食べるパテ、冷静のおつまみが並び、初めて会う人や久しぶりに会う人との歓談を楽しみながら新郎新婦の到着を待ちます。

   
 

この間新郎新婦はロケーションの綺麗な場所で写真撮影をしています。マドリッドでは王宮をバックに写真を撮るのが大人気です。

   
 

写真撮影を終えた新郎新婦が披露宴会場に到着し、各自のテーブルに招待客が着席するとライトが消され、入場の音楽が鳴ります。披露宴会場に入る新郎新婦を拍手で迎えるのは日本と同じです。日本と違うのはその後に余興やスピーチ、カラオケ、お色直しなどが一切無い事です。食事の歓談の邪魔にならないようなクラッシク音楽をかけ、ただひたすらに食べて飲んでお喋りするのがスペイン流。

まず最初にサーブされたのはマッシュルームのスープです。先程のカクテルタイムで、ソーセージ類のお肉を大量に食べたお腹に優しいクリーミィな味でした。
スープの後は魚料理です。サーモンのソテーにハチ蜜ソースがかけてあります。とてもジューシーなサーモンとほんのり甘い蜂蜜ソースが絶妙のバランスです。

魚料理の後に出されるのはお口直しのレモンとシャンパンのシャーベット状のカクテルです。これがとっても美味しくてついつい飲み過ぎてしまい、宴半ばで既にほろ酔い気分です。
   
 

メインの肉料理はフィレ肉の上にフォアグラを置き、ポルトガルのポルトワインとプラムを使ったソースをからめ、パイ生地で挟んであります。サクサクとした歯ごたえのパイ皮と滑らかなフォアグラ、フルーティなソース、全ての相性が抜群でとても美味しく頂きました。

唯一残念だったのはお肉が焼き過ぎだった事。でもスペイン人は生焼けの肉が苦手なので、普通はレアにしてとお願いしない限りきちんと中まで火を通されてしまいます。お肉の焼き加減はレアが好きだ、なんて発言をすると吸血鬼かと恐れられたりするお国柄なのです。今回のお肉も厚みのある良いお肉でしたが、中までしっかりと焼かれ、中心にちょっぴりピンク色が残る程度だったのがレア好きな私的には残念でした。勿論周りのスペイン人は喜んで食べてましたが。
   
 

メイン料理が終わるとライトが消され、入刀用のケーキが出されます。お決まりのケーキカットの後はファーストバイト、その後は招待客全員にケーキが取分けられます。ケーキはサン・マルコスと呼ばれるスペインでは定番中の定番のケーキです。ほんのりお酒の効いたスポンジでたっぷりの生クリームを挟み、卵の黄身と砂糖を混ぜたソースで表面を飾ります。日本人には甘すぎる味ですが甘党のスペイン人は大好物です。一緒にカスタードクリーム味のアイスクリームもサーブされました。

   
 

デザートを食べ終えるとダンスタイムの始まりです。まずは新郎新婦がファーストダンスを踊ります。このファーストダンスをきちんと踊る為に、結婚式直前にダンス教室に通うカップルも多いとか。ファーストダンスの後は新郎が新郎の母と、新婦が新婦の父と踊ります。それが終わると皆が参加してのダンス大会となります。踊る事が大好きなスペイン人ですから、このダンスタイムは明け方まで続きます。スペインの結婚式は本当に体力勝負です。

   
 

面白い習慣と言えば新郎のネクタイをハサミで細かく切ってお盆に載せ、各テーブルを回ってその細切れのネクタイを売り捌く事でしょうか。また新郎が新婦のスカートに潜り込み、ガードルを外し、それを細かく切って女性の招待客に売ったりもします。このように集めたお金は新郎新婦へのカンパとなり、ハネムーン資金の一部となるそうです。

人生の良き日に立ち会ってもらいたい大切な人達を集め、教会で永遠の愛を誓い、その後は美味しい食事を皆で楽しむ。とてもシンプルですが、結婚式の原点を見たような気になりました。

結婚式シーズンの6月にスペインを訪れ、教会の前で写真撮影をしている幸せ一杯の花嫁花婿に会った時は「フェリシダデス!」(FELICIDADES:おめでとう)と一言かけてあげて下さい。とっても喜んで、最高の笑顔で「グラシアス」(GRACIAS:ありがとう)と答えてくれるはずです。

   
 

取材:市川由実

   
   
 
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