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パエリアにガスパッチョ、生ハム、コシード、子豚の丸焼き・・・。
気取らない普段着のスペインから、ちょっとおしゃれなスペインまで。
マドリッド在住二人の日本人女性が贈る、スペイン 食の魅力。
   
 
   
 
“この世の美味を楽しみたいものは、食欲を満足させる機会を差し出されたら、それを享受すべきだ。その幸運を喜んで受け入れるものには、至福の一時が与えられ、その機会を後回しにするものは、それを失うだろう。人とは儚いものであり、瞬間の所産であるから”
グラナダ、ズィーリー朝最後の王、
アブド・アッラーの言葉より。



 スペインの観光モニュメント訪問者数一位を占めるアルハンブラ宮殿。多くの方が名前くらいは聞いたことがあるかもしれません。スペインは約700年に渡り、イスラム勢力に支配されていた歴史的経緯があり、その影響が随所に見られ、スペインと他のヨーロッパの国々と異なる印象を与える大きな要因になっています。なかでもアルハンブラ宮殿を有するグラナダはイスラム文化の香り漂う、異国情緒漂う街です。
 今回ご紹介するのはそのアルハンブラ宮殿の敷地内にある、パラドールと呼ばれる元国営のホテルの中にあるレストラン。パラドールは元国営といっても、日本の国民宿舎とはその概念が異なり、歴史的建造物をホテルとして改装して利用されています。ここグラナダのパラドールはレコンキスタ(国土回復運動)後にキリスト教徒が造った最初の建造物のひとつで、元はキリスト教徒の修道院です。パラドールというと元お城や貴族の館といったものもあり、天蓋つきの豪華なベッドがあるなど、華美な装飾のところもありますが、グラナダのパラドールは元修道院というだけあって、どちらかというとちょっと質素な内装です。しかしなんといっても、アルハンブラ宮殿の敷地内にある立地条件のよさから、予約の取りにくいホテルの一つでもあります。料金もパラドールの中でも一番高く設定されていますが、それでも人を惹きつけてやまないのは、やはりアルハンブラ宮殿が持つ独特の魅力なのかもしれません。
 さて、そんな憧れのパラドールですが、利用法は宿泊だけでなく、食事だけでも、またはお茶だけでもする価値のある場所ですので、アルハンブラ宮殿まで足を運ばれた方は是非寄ってみてください。冒頭にご紹介したアブド・アッラーの言葉ではありませんが、「また次回、来た時に。。。」なんて思っていると、その次回が訪れないかもしれませんよ。
 
 
■宿泊以外のパラドールの利用法
 私が地方に行くときに、その町にパラドールがあれば宿泊はしなくても、食事やお茶をするのによく利用しますが、さすがはもと国営の宿泊施設だっただけあり、そのサービスや内装、雰囲気に至るまで、細やかな心配りがされています。スペインのレストランはワイワイ賑やかで楽しい雰囲気のなか食事できるのが一つの楽しみでもあるのですが、たまには“ゆったりとした食事を”、と思ったときには旅行中であれば迷わずにパラドールを選びます。パラドールで食事というと、どうしても“高い”というイメージが先行してしまうようですが、メニューの中から選べば一人30ユーロ前後。ワインなど飲み物は別料金になりますが、お手頃価格のワインも用意されていますので、それほど心配ありません。せっかくの旅行ですから、思い出に残る食事にしたいものですね。
   
 
こちらが普段のレストランの様子。
たっぷり自然光が入り、気持ちいい。
現在の臨時のレストラン。
こぢんまりとしていますが、趣がある内装です。
普段のグラナダのパラドールのレストランは、テラス席になっている中庭が見え、自然光も入るゆったりしたスペースです。今回はちょうど改修工事中の時期と重なり、こぢんまりとした、しかし趣のある臨時のレストランでの食事となりました。パラドールの入り口にレストランの利用も “予約者のみ”という案内があり、予約無しで直接来てしまったのでちょっと心配になりましたが、席に余裕もあり、問題なく食事することが出来ました。出来れば予約は入れたほうがいいかもしれませんね。
窓から外を眺めていると、ちょうどリスが木に登っているのが見えました。とてものどかです。
 

天井のタイルも可愛い色使いです。アンダルシアではタイルを使った装飾がよく見られます。

シャンデリアも華美になりすぎず、落ち着いた雰囲気を作り出しています。

 
ゆったりとした時間を味わいつつ、そろそろお待ちかねの食事の方へ。今回は車での移動ということもあり、残念ながらアルコール類は断念しました。ほんとに残念。。。次回は滞在する予定で訪れたいものです。


さて、まずはアペリティフ。
フォアグラのブラックオリーブ添え。

カトラリーが日本の“れんげ”に似ていますね。

1皿目に選んだのは、
“モサラベ風ナス、ゴマとアボガドシロップ和え”
モサラベ風というのは天ぷらのような揚げ物を指すのでしょうか?ナスを天ぷらのようにフライしたものにアボガドシロップと炒りゴマがかかっています。
シロップの甘さとゴマの香ばしさが絶妙の組み合わせです。味もさることながら、絵画のような飾り付けがとても可愛いかったです。

モラサベとは、イスラム支配下のキリスト教徒のことです。この時代の食文化についてはあまり文献がなく、詳細はよくわからないのが残念です。 ただ、スペイン文化全般にイスラム文化の影響が数多く残っていることからもわかるように、食文化にも多大な影響を与えています。

“そら豆フライ、トレベレス産生ハム添え”
フライといっても、我々日本人の感覚とは異なり、オリーブオイルを使って炒めたものです。オリーブオイルをたっぷり使うので、フライと呼んでも不思議ではない気もしますが。。。
上に乗っているのはグラナダ近郊の村、トレベレスTrelevez産の生ハムです。イベリコの原産地呼称は得ていませんが、グラナダのハムも甘みがあって美味しいことで有名です。
私も普段の食事用にはグラナダ産の生ハムをよく買います。添え物はおそらくオーブンで焼いているのだと思いますが、パリッとしていて、食感に変化を与えていいですね。

続いてメインに選んだのが“アルプハラ風カントリーチキン” 見た目はちょっと味が濃そうでこってりしているのかなという印象を受けましたが、食べてみると意外とあっさりしています。野菜もふんだんに使われていてバランスも考慮されているようです。
ちなみにアルプハラとはグラナダ近郊の村の名前です。

こちらは“鱈のピルピル”
ピルピルというなんとも可愛い名前は、料理を作っているときに“ピルピル”(と聞こえる)音がすることに由来するそうです。
鱈の皮と身の間のゼラチンが解け出るときの音という節と、オリーブオイルでにんにくを丸ごと炒めるときに聞こえるという節があるようです。

さて最後に楽しみなデザート。デザートメニューのなかには、その土地の伝統的なものとは別に、グルテン抜きのものや、糖尿病患者用という項目もありました。スペインでもアレルギーや食事制限のある病気が認識されてきているということですね。
クアハード・デ・カルナバル
ゼリーのように果実を凝固したデザート。名前からもわかるように、ちょうどカーニバルの時期の食べ物だそうです。
チーズヨーグルトの赤果実のソース添え
チーズのこってりさとヨーグルトのさっぱり感がマッチしています。
 
かつてはパラドールでの食事は味、お値段もさることながら、量がとても多く、シエスタ無しではちょっとつらいという印象がありましたが、今回は量も適量で食べすぎ感もなく、雰囲気も手伝ってとても満足して、グラナダの街を後にすることが出来ました。

現在はカフェテリアも改装中で、写真は臨時のカフェテリアです。噴水のある中庭がいかにもアンダルシアといって感じです。
イスラム文化では“水”をいろんなところにうまく取り入れており、乾燥したスペインで水の音を聞くと、ほんとにホッとする気がします。スペインに灌漑技術をもたらしたイスラム文化、その恩恵は今も引き継がれているのですね。

幻想的な夜のアルハンブラ宮殿。アルバイシン地区のサン・ニコラス展望台からの眺めです。
異国情緒溢れるグラナダは、スペインに長年住んでいてさえ、時折訪れたくなる不思議な魅力を持つ街です。スペインに来る機会があれば、是非足を運んでみてください。独特の雰囲気と美味しい食事の記憶が、いっそう思い出深いものになることと思います。

パラドール・デ・トゥリスモ
サン・フランシスコ
Real de la Alhambra, S/N
18009 Granada
Tel: +34 958 22 14 40
Fax: +34 958 22 22 64
URL: http://www.parador.es/

   
 

文:山田さつき

   
   
 
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