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  美食の国から    
 
  ヨーロッパ美食の国から
東洋の日出ずる国≪ジャポン≫へ、
フランス人シェフの日本における
ダイナミックな活動とその人柄、足跡を追った。
   
 
 
   
 
 
 
 
 

ジェローム キルボフ氏

 
   
 
 

スペインでは定番のトマトを塗ったパンの上に、オリーブオイルでソテーされた旬のあま鯛。あま鯛の表面には、サクッとフライにした鯛の鱗(うろこ)が飾られ、周りにはリンゴとカレー粉を加えたスパイシーな野菜のピュレ。そして乾燥フルーツと松の実、バニラオイルのアクセント。フルーツとスパイスの香りに包まれたあま鯛の一皿は、ソースで食べるというより、新鮮な素材のストレートな味覚と食感の組み合わせを楽しめる一品であった。

東京、中央区日本橋、コレド日本橋ANNEXにあるレストラン≪サン・パウ≫は、2008年「ミシュランガイド東京」にて、2つ星を獲得したスペイン料理店である。
2006年7月から、同店のエグゼクティブシェフを努めるのは、フランス人のジェローム・キルボフ氏だ。
「スペイン料理は、ヨーロッパの料理がそうであるように、オリーブオイル・トマト・ニンニクがベースになっています。スペインでは、クリームやバターはあまり使いませんね。また、地理的・歴史的にアラブやアフリカの影響を受けているため、乾燥豆や乾燥フルーツなどを使います・・」。そう語るキルボフ氏の足跡を追ってみた。

 
   
 
   
 

■大好きなおじいさんは肉屋さん。
1977年、フランス・パリに生まれる。父親は、戦闘機の整備員で、母親は、市役所に勤めていた。おじいさんは、肉屋を営んでいた。また、おじいさんの兄弟の一人は、ノルマンディーで、もう一人は、南フランスでレストランを経営していた。ジェロームは、小さいときからおじいさんの肉屋を手伝ったり、レストランでの仕事を経験していた。子供心におじいさんの存在をとても誇りに感じ、料理の道を志すようになっていく。

   
 

■シェフを喜ばせるために?コンクール出場。
15歳からパリの料理学校に通う。学校は、5年間。料理、お菓子を学びながら、フォションやルノートルなどのパティスリーやいくつかのレストランで研修をした。
学校を卒業すると、スペインに渡り、バルセロナにあるホテルメリディアンのレストランに職を得た。スペイン語はまったくわからなかったので、語学を学ぶため、小さいレストランで働いたりもした。しばらくすると、兵役のため、帰国。兵役後は、イギリスに渡るが、そこでの仕事は、ジェロームの興味を引くものではなかった。再び、バルセロナに行くことになる。バルセロナにあるヒルトンホテルのレストランに職を得た。シェフは、ペドロ・コレドール氏。ジェロームは、コレドール氏から伝統的なスペイン料理を学んだ。 ヒルトンホテルでの仕事が5年になろうとしていたとき、コレドール氏は、ジェロームにカタルニア(スペイン北東部の地方)の料理コンクールに出場するように薦めた。一方、ジェロームは、まったくその気がなかった。しかし、出場を渋るジェロームにコレドール氏は、執拗に出場を迫ったのである。
「最後は、コレドール氏を喜ばせるために出場しました(笑)」。
ジェロームを除き、コンクールの参加者は、全員がスペイン人。外国人はジェローム一人であった。そこで、ジェロームは、ファイナルに残り、最後は優勝を勝ち取ったのである。24歳の時であった。

   
 
   
 

■コンクールがもたらした二つの幸運。
コレドール氏に執拗に迫られて出場したコンクールではあったが、そこには、優勝という結果とともに、実はもうひとつその後の人生を大きく変える出来事が、ジェロームを待っていた。
このコンクールの審査員長を務めていたのは、カルメ・ルスカイェーダ氏。スペインのレストランで、ミシュランガイド2つ星(当時)を有する唯一の女性オーナーシェフであったのだ。ルスカイェーダ氏は、ジェロームの料理スタイルを、驚きをもって見ていたという。それは、ジェロームの料理のなかに、ルスカイェーダ氏自身のスタイルと共通するものがあったからだ。
伝統的なスペイン料理をベースに、新鮮な季節の食材を用い、エレガントに組み合わされたルスカイェーダ氏の料理は、世界中から注目を浴びていた。
ルスカイェーダ氏は、ジェロームを自身のレストラン≪サン・パウ≫に招待した。そして、はじめて口にする≪サン・パウ≫の料理は、ジェロームを魅了した。
「相思相愛」。ルスカイェーダ氏もジェロームが≪サン・パウ≫で働くことを望み、ジェロームも≪サン・パウ≫で働きたいと思った。

   
 

■ルスカイェーダ氏のもとで、3つ目の星獲得。
2005年からルスカイェーダ氏のもとで、働くことになる。ルスカイェーダ氏の厳格でありながら、女性的な技法や考え方は、ジェロームの技量を限りなく高めた。
ルスカイェーダ氏は、ジェロームにとって、師匠であるとともに母親のような存在でもあるという。
そして1年後、レストラン≪サン・パウ≫は、ミシュランガイドで3つ目の星を獲得した。その後、≪サン・パウ≫東京店のエグゼクティブシェフとして来日したのである。
「私にとって、東京で働けることは、とても大きなチャンスだと思っています」。
「東京店には、若い料理人たちがたくさんいます。彼らは、とても気さくで、団結や助け合いの心が強いですね。家族的でチームワークがいい。仕事環境には満足しています」。
「レストランの仕事は、とてもストレスの大きい仕事ですからZEN(禅)の心が大事かもしれませんね(笑)」。

フランス人シェフが腕をふるうエレガントなスペイン料理は、今後も進化を続けていくことであろう。
今後の更なる活躍が楽しみだ。

   
 
 

(第30回了)

 
     
 

(取材・文/馬場雅教)

 
 
 

シェフの一皿

Amadai,salsa curry ,nyocas ,oli de vanilla
あま鯛 カレーソース ニョカとバニラオイル

 

レストラン サンパウ
RESTAURANT SANT PAU
http://www.santpau.jp/
東京都中央区日本橋1-6-1 コレド日本橋 ANNEX
TEL03-3517-5700

 
   
   
   
   
   
   
 
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